頭痛のする日

雑記

 朝から頭痛のする日は、なぜだか晴れの日が多い。それも気持ちのいい、のんびりした気分になるような。

 猫に起こされたのが六時で、そのときすでに眉毛のあたりがずきずき脈打っていた。猫くんにひとまずごはんをあげて、もう一度ベッドに戻った。次に目が覚めたのが八時。ずきずきの感じは変わっていなくて、しばらくベッドでごろごろしたりして誤魔化して、やっぱり薬を飲もうと思って起き出す。

 空腹で頭痛薬を飲むとお腹が痛くなるし、薬の効きも悪いような気がするから、何かお腹に入れなければならない。適当なものでお腹を満たしてしまうのは勿体ない。そう考えるのは、五月ごろからこっち、十キロ以上の減量をしたせいなのは間違いない。同じようにカロリーを摂るのなら、ちょっとでも美味しいものを、ちょっとでも楽しいものを。まあ、平日仕事をしているときの食事は味気ないものが多いのだけれど。

 けっきょく、車で十分くらいのところにあるバーガー屋さんでカモネギバーガーなるものを食べた。夕ごはん用にサンドイッチも買った。バーガー屋さんでバーガーを食べ終えた後、バファリンを二錠飲んだ。冷たい水で流し込んだ。バーガー屋さんでしばらく本を読みながら薬が効くのを待っていたけれど、なかなか効きそうになくてお店を出た。

それから、公園の中にあるコーヒー屋さんで、ホットコーヒーとさつまいもを買うことにした。さつまいもは、うちの猫くんのお土産に。猫くんはさつまいもが大好きなのだ。公園は、大きな沼のほとりにある。ほんとうに大きい沼で、水辺は吹く風が冷たい。でも、ほんとうにいい天気だった。夫婦らしい中年の男女が私の前でサンドイッチを注文していた。

「テイクアウトですか?」

そう店員に聞かれて、二人とも男女はちょっと真剣になって考えた。男性の方が質問を返した。

「テイクアウトだと、どんなふうです…?」

 ちょっと要領を得ない質問で、たぶん男性の方もなんと聞くべきか定まらないままだったみたいで、声は宙を漂った。それで店員の方も、

「ええと、テイクアウトだと、紙袋に入れられますが」

と、そおっとした調子で答えた。男女は再び真剣になって、男性の方が再び口を開いた。

「そうですね。なら、テイクアウトがいいかな。食べきれないときのことも考えて」

 男性が言い終わったところで、女性の方がが男性を小突きながらはしゃぐように笑っていた。

 振り返って公園を見渡すと、周辺に置かれたベンチでさつまいもを頬張っている人がいたり、コーヒーを啜る人がいたり、誰もいないベンチに数冊本が積まれてあったりした。外にいるせいなのか、なぜか人びとの声はあまり聞こえてこない。だいたいの人が家族連れだったり夫婦だったりカップルだったりするらしいのに、みんな話し合ったり笑い合ったりしても、、ひそひそしているみたいに静かだった。

 なんとなく、ここに来ればよかったんだな、と私はひとりで納得した。

 これを書きながら、頭痛はもう治まった。私は、春から本当に引っ越すことができるんだろうか。でも引っ越さなくちゃならない。自分を鼓舞するみたいに、いろんな人に「遅くとも三月で引っ越します」と伝えるようにしていたここ最近。遠くへ引っ越したなら、あの公園にもそうそう気軽には来られなくなるだろうから、今のうちに楽しんでおこう。よく見ておこう。

 猫くんは、喜んでさつまいもを食べていた。

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